【さがみはらロボット導入支援センター】ロボット活用先進事例を紹介します!(株式会社第五電子工業)

【さがみはらロボット導入支援センター】ロボット活用先進事例を紹介します!(株式会社第五電子工業)

ロボット活用を通じて会社を成⾧させた社⾧の挑戦とは

株式会社第五電子工業(本社:相模原市緑区)は、1960 年の創業以来、ステンレスを中心に金属の部品加工を生業とし、溶接、機械、板金加工の設備を同じ敷地内に有している。

特に溶接加工に重点を置いており、一般的な TIG 溶接を始め、ロボット溶接、ファイバーレーザー溶接、自動溶接等、多彩な設備を導入している。気密溶接の中でも水密溶接をメインターゲットとしており、熱交換器(ラジエーター)や水路付きのチャンバー、ジャケット構造品などの水密溶接品を多く手掛けている。

他にも、化粧ミガキの板金パネル溶接や、溶接後の二次加工を含む製品も得意としている。

主な得意先は、半導体製造装置メーカーや真空装置メーカー。
部品加工だけでなく、クリーンルーム内のユニット組立まで幅広く対応。

また近年では、半導体製造装置の業界の動向に関わらず、持続的な事業を進められるよう、これまでに培った知識を生かし、食品機械、医療機器、航空宇宙等、あらゆる業界の加工品にチャレンジしている。

今回、株式会社第五電子工業の代表取締役、水田光臣氏に取材に応じていただきました。

腕を組み、こちらを見てほほ笑む水田社長
代表取締役 水田光臣氏

ロボット導入のきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけは、主要取引先である半導体製造装置メーカー様の増産に対応しきれず、お叱りを受けたことです。
増産体制を構築するには、ボトルネックとなっていた溶接工程の人員を増やす必要がありましたが、社内で一人前の溶接工を育成するには3年という長い時間が必要です。このままでは取引を打ち切られてしまうという強い危機感から、溶接ロボットの導入を検討し始めました。

当初、社内からの反発もあったそうですが、どのように対応されたのでしょうか?

社員からは「ロボットでは複雑な溶接はできない」「ロボットを操作できる人材がいない」といった否定的な意見もありました。
「最初から100%ロボットに頼るつもりはない。ロボットと人が共存して作業する方法を模索していい。」
と伝え、まずは一歩踏み出しました。
トライアルとして、溶接ロボットメーカーにテスト溶接を実施してもらったところ、結果は良好、仕上がりも期待通りだったため、導入を決断しました。

溶接ロボット
TIG溶接ロボット

実際にロボットを導入されてみて、いかがでしたでしょうか?

導入当初は、古株社員を中心に否定的な見方をしていた社員もいましたが、若手社員が中心となって溶接ロボットの立ち上げに苦労しながらも懸命に取り組み、品質の改善に努める姿を見て、周囲の社員からも前向きなアドバイスが出るようになりました。
中には、自ら溶接ロボットを操作したいと志願する者まで現れ、徐々に社内の雰囲気が変わっていきました。

現在では、溶接ロボット9台、協働ロボット(サンダー仕上げ用)1台、合計10台のロボットが稼働しています。

協働ロボット
協働ロボット(サンダー仕上げ用)

ロボット導入による具体的な効果はどのようなものがありましたか?

まず、生産能力が大幅に向上し、半導体製造装置メーカー様からの急な増産要求にも柔軟に対応できるようになったことが大きな成果です。
また、溶接ロボットのオペレーターも育ち、難しい溶接にも積極的に挑戦する風土が社内に醸成されていきました。

溶接ロボットの活用事例を展示会などで紹介したところ、新規取引先の獲得にも繋がりました。
私は常々、「受注が増えてから投資を検討するのでは遅い。まず投資をしてから、積極的に売り込み、受注を増やしていくことが大切だ。」と考えています。

思いがけない副産物もあったそうですね。

学生向けの会社説明会で溶接ロボットが並ぶ生産ラインを見せたところ、「自分もロボットを操作してみたい。」という応募者が増えたのです。
新しい技術に意欲的に取り組む人材が増え、中には自費で3Dプリンターを購入し、治具を製作して会社に持参してくれる社員まで現れました。
これには本当に驚き、嬉しかったですね。
後日、その3Dプリンターは会社で購入しました。

ロボットの稼働率向上にも積極的に取り組まれたと伺いました。

導入当初はワークの交換に時間がかかり、ロボットが停止している時間が多かったため、フル稼働を目指して改善に取り組みました。
溶接ロボットの周囲に4台のポジショナーを設置し、1台のポジショナーを使用中に他のポジショナーにワークを取り付ける「外段取り化」を行うことで、ほぼ100%に近い稼働率を実現しました。

さらに、ポジショナーへのワーク固定用治具を装着することで、作業者は短時間でワークを交換できるようになり、1人で3台の溶接ロボットを同時に操作することが可能になりました。

溶接ロボットと周囲にあるポジショナー
TIG 溶接ロボット+ポジショナー
(ロボット 1 台につき各 4 台)

生産性向上だけでなく、社員の負担軽減にも配慮されているのですね。

「必ずしも“即時・直接的”な生産性向上に繋がらなくても良い。」と考えています。
例えば、サイクルタイムが短縮しなくても、社員の身体的・精神的な負担が軽減できるのであれば、十分に検討に値します。
作業環境の改善は、結果として安全で活気ある作業現場へと繋がり、長期的な生産性向上や品質向上に貢献すると考えています。

また、相模原市をはじめ、国や県も中小企業の設備投資に関して様々な支援策を用意してくださっています。
相模原市の産業用ロボット導入補助金など、各種支援策は導入のハードルを大きく下げてくれます。積極的に情報を収集し、活用することが重要だと感じています。

挑戦する社風へ変革した水田社長の心構えを教えてください。

挑戦には失敗がつきものです。挑戦する社員の失敗を責めてはいけません。
責められた社員からは、斬新なアイデアは生まれにくくなり、意見があっても言わなくなってしまうのは当然のことです。
成功か失敗か、100か0かではなく、50や70でも良いのです。
最初から100%のロボット化を目指すのではなく、70%をロボットで作業して、残り30%は手作業で仕上げるという解もあります。

自治体の支援策や支援機関を上手に活用しながら、第一歩を踏み出すことが大切です。そして、社員一丸となって試行錯誤しながら、自社に合ったロボットの活用方法を確立していくことが、ロボット導入の成功への近道だと信じています。

インタビューにご協力いただきありがとうございました!

企業プロフィール

株式会社第五電子事業の会社外観
企業名株式会社第五電子工業
所在地(本社)相模原市緑区橋本台 2-7-23
設立1960 年(昭和 35 年)7 月
代表者代表取締役 水田 光臣
資本金1,000 万円
従業員数113 名
事業内容生産用機械機器
半導体・フラットパネルディ
スプレイ製造装置 製造業
URLhttps://www.netdaigo.com/

※相模原市「平成 28 年度産業用ロボット補助金」活用企業

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