看護や介護、それに建設現場…。重いものを持ち運びする現場で多くの人が悩ませているのが腰痛です。
現在は、パワーアシストスーツなどが実用化されていますが、1分1秒を争う多忙な現場では、装着する手間も時間もありません。
そうなると普段から「腰痛をいかに予防するか」が重要になってきます。
こうした中、さがみはらロボットビジネス協議会(以下、ロボ協)による展示会への共同出展がきっかけとなり、メディアロボテック(相模原市中央区千代田)と青山学院大学理工学部電気電子工学科の伊丹琢助教(現・明治大学理工学部電気電子生命学科専任講師)が出会い、画期的な腰痛予防スマートデバイス「LBPP」を共同開発しました。
腰痛予防スマートデバイス「LBPP」を共同開発した、メディアロボテックの金沢勇社長と伊丹琢助教にお話を伺いました。
「予防」に注目
──伊丹教授はメカトロニクス分野の専門家でありながら、看護や介護現場で即生かせる「本当に使えるモノづくり」の研究を進められているそうですね。
伊丹氏:はい。母親が大学の看護学部で教員を務めていることもあり、幼い頃から看護現場の課題に触れてきました。
特に、多くの看護師や介護士が腰痛に悩まされていることに強く心を打たれ、その解決に貢献したいという思いから、メカトロニクス分野の専門知識を活かした研究に取り組むようになり、人間工学に基づいた腰部負担解析のアルゴリズムを研究していました。
──メディアロボテックとの連携はどのような経緯で決まったのでしょうか。
伊丹氏:腰痛防止デバイスをカタチにできる企業を探していた頃に、国際ロボット展で出展ブースを見学する機会がありました。
ロボ協ブースでメディアロボテックさんが共同出展しており、青学大の地元である相模原市に拠点を置く企業ということもあり、親近感を持ちました。
医療機器開発の経験も豊富であることから、連携を希望しました。
2年で異例の製品化
──伊丹助教と連携して開発をされた経緯についてお聞かせいただけますでしょうか。
金沢氏:メディアロボテックは次なる新製品のアイデアを探しており、高機能センサー「LiDAR(ライダー)」を使った人間の動き解析システムの構想を練っていました。そんな中、伊丹助教の研究内容を知り、腰痛防止デバイスの共同開発に参画することを決意しました。
──製品化までわずか2年で実現されたとのことですね。
金沢氏:一般的に、大学と企業の共同研究では市場の仕様に合わせられず、開発段階で頓挫してしまうケースが多いです。
そう考えると、わずか2年で製品化できたのは異例です。
現在は看護大学や病院にもデモ機を貸し出し、より現場に則した製品とするために実証を重ねています。
腰痛防止スマートデバイス「LBPP」について
概要
メディアロボテック株式会社と青山学院大学の伊丹助教が共同開発した腰痛予防スマートデバイス「LBPP」は、胸ポケットに装着するだけで、作業中の前傾角度やひねり角度を検出し、腰痛リスクを知らせる画期的な製品です。
特徴
- 小型軽量で持ち運び便利
胸ポケットに収まるスマートなサイズで、重量わずか50g。長時間の装着でも負担になりません。 - 高精度な9軸センサー
加速度、角速度、地磁気の3種類のセンサーを内蔵し、装着者の動きを9軸で高精度に解析します。 - AIによる分析
センサー情報からAIが学習し、重いものを持ち上げる動作など、腰痛リスクの高い動作を自動的に検出します。 - リアルタイムアラート
腰痛につながる前傾角度やひねり角度になると、スマートフォンアプリを通じてアラームで通知します。 - トレーニングモード
作業中の姿勢を録画し、後から確認することで、腰痛予防に役立つ正しい姿勢を身に付けることができます。 - REBA準拠
腰痛リスクとなる前傾角度は、国際的な職業腰痛リスク評価法「REBA」に準拠しています。
金沢社長は
「(同デバイスを活用することで)労災防止にもなります。腰痛防止の市場は大きく、他業種への用途拡大も視野に入れています」
と語っています。
企業情報
株式会社メディアロボテック
https://industry.city.sagamihara.kanagawa.jp/company/sgm-43/
伊丹研究室(明治大学理工学部電気電子生命学科)
https://www.itami-robot-research.net/
さがみはらロボットビジネス協議会(SRBC)
相模原市では、ロボットをテーマとしたビジネスの推進を多面的に支援するため2014年に「さがみはロボットビジネス協議会」を設立しました。中小企業、大学等研究機関、金融機関、行政や支援機関で構成し、ロボットビジネス推進のための地域のプラットフォームとして、ロボット産業の振興や起業のビジネス支援に取り組んでいます。