「究極の理想の工場は、朝社長が出社してボタンを押すと全自動で製品がつくられて、出荷される工場です。」 そう冗談交じりにインタビューに応えてくれたのは、城山工業株式会社の生産技術部部長の藤原郁氏だ。
城山工業株式会社について教えてください。
1960年11月に創業以来、城山工業株式会社は60年以上にわたり、プレス部品の製造を通じて、ものづくりの道を歩んできました。
日野自動車やトヨタ自動車をはじめ、ケアサポートに従事する福祉車両など、幅広い分野で活躍する高品質なプレス部品は、最新技術と独自の設備開発によって生み出されています。
具体的には、プレス機械、タレットパンチ加工機、2次元レーザー切断機に加え、回転型プレス機やプレス機内搬送用ロボットといったオリジナル設備を開発・導入することで、精密でスピーディーな加工を実現しています。この柔軟な生産体制により、顧客の多様なニーズに迅速かつ高精度に対応することが可能になっています。
ロボット活用はどのような役割を果たしてきたのでしょうか?
弊社では、40年以上ロボット活用をしており、ロボット活用は単なる技術的な手段ではなく、弊社の文化ともいえます。
自社工場での運用以外にも、以前はプレス機搬送用ロボットの自社開発、販売も行ってきた経験があります。この経験とノウハウは、今回取材していただいたロボットシステムにも活かされています。
ロボットシステムの導入にあたり、課題はありましたか?
構想段階で5つの課題があがりました。
いずれの課題も、弊社だけでなく、ものづくり企業共通の悩みではないでしょうか。
- スペースの改善:工場内の限られたスペースの有効活用。
- 物流:工程間に搬送が必要で、運搬の無駄が発生。
- 人手不足:作業者の不足。年々深刻化。
- 品質:人に依存した検査による品質のばらつき。
- 安全:怪我等労働災害リスクを内包。
この課題に対し、ロボットシステムは非常に優れた結果を出しました。
- スペースの改善:工程間集約で設備面積を約40%縮小。
- 物流:設備間搬送(約50mの人手での搬送作業)の撤廃。
- 人手不足:2名(4名→2名)の省人化を実現。
- 品質:検査工程の自動化から品質の均一化に貢献。
- 安全:注意を要する作業から従業員を遠ざける事に寄与。
ビジョンセンサ付きハンドリングロボット溶接システム
- プレスされた板金部品と複数箇所屈折している丸棒の2つの部品をロボットⒶによりピッキング・セットされ、次工程へ供給。
※相模原市 令和4年度 産業用ロボット導入補助金 - ロボットⒷによって2つの部品がアーク溶接される。アーク溶接完了ワークはロボットⒷのマニピュレータに取り付けられたフックで治具より取り出し、次工程の供給ステージへ位置決めなしでランダムに供給される。
- ロボットⒸに取り付けられたカメラでサーチを行い、座標認識したワークのデータをロボットⒸに出力し、補正された動作でワークをチャッキングし、ナット溶接のハンドリング作業を行う。
- ナット溶接完了後、ロボットⒸは完成品をセンサに持っていき、溶接品質検査とナットの有無の確認を自動で行う。
ロボットシステム構築における地域SIerとの連携について教えてください
このロボットシステムの構築には、市内ロボットSIer企業である
・永進テクノ株式会社
・JET株式会社
・株式会社トランセンド
3社のご協力が欠かせませんでした。弊社で作成した仕様書に基づき、システム構築に必要な要素を共に検討し、機器選定や導入に向けた支援を総合的に受託していただきました。
ロボットSIerの選定にあたって、もちろんSIerとしての技術力や実績は重要でしたが、それ以上にコミュニケーションの取りやすさを重視しました。ロボットシステムは、単に機器を導入すれば良いというものではなく、生産現場との密接な連携が不可欠です。そのため、何かあればすぐに相談できる距離や関係を築けるSIer企業を選びました。
理想の実現に向けて、どのように取り組んできましたか?
生産技術部門に配属されて以来、私は常に10年後、20年後の生産現場について考え、業務に取り組んできました。
その中で、「人は集まらなくなるだろう」「海外の生産にシフトするだろう」という危機感を持っていました。
同時に「究極の工場(朝社長が来てボタンを押したら製品ができてくる工場)」という夢を持ち続け、その夢に対して今の技術はどこまでできているのかを日々自問自答しながら過ごしてきました。
夢まではまだまだ随分遠いですが。
理想の実現には、以下の3つの柱を重点的に取り組んでいます。
- 少量多品種に対応できる工程設計と工場レイアウト設計
- ワークのばら積みピッキングの自動化技術の発展
- 工場内物流の自動化の実現
また、技術者一人一人が能動的に情報収集をし、継続して学ぶことができる環境を整えています。
今後も、確実な基礎技術力の蓄積と積極的な新技術の開発により、短納期・高品質・低コストの「ものづくり」を提供し続けていきます。そして、理想の工場の実現に向けて、さらに努力を続けていきたいと考えています。
インタビューにご協力いただきありがとうございました!
企業プロフィール
企業名 | 城山工業株式会社 |
所在地 | (本社)相模原市緑区橋本台2-6-5 |
設立 | 1960年(昭和35年)11月 |
代表者 | 代表取締役 山﨑 利宏 |
資本金 | 4,200万円 |
従業員数 | 320名 |
事業内容 | 輸送用機械器具製造|精密板金加工 各種機械の考案設計・製造販売 |
URL | http://www.shiroyama.net/ |
相模原市内 地元SIer企業
永進テクノ株式会社:相模原市緑区下九沢1630-2
http://www.eishin.info/
JET株式会社:相模原市中央区田名3371-27
https://jet-co.jp/
株式会社トランセンド:相模原市緑区西橋本5-4-30 SIC2 R&D Lab 2315
https://transcend.expert/